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2024.05.17 小川 真由美

初めての朗読劇

もしかしたら意外に思われるかもしれませんが、アナウンサーという仕事は常に脇役です。ステージに上がることは多くても脚光を浴びることは滅多にないのですが、直近2度もスポットライトを当てて頂く機会がありましたので、2週に分けてご紹介させてください。

まずは、先週末、初めて人前で朗読をお聞かせする機会がありました。

知人でベネツィア在住のガラス作家・土田康彦さんのイベントで彼の著作『辻調鮨科』の一部を朗読するというもの。共通の友人を通じて知り合いましたが、とても多才な方で、本職のガラス工芸はもちろんのこと、食、音楽、芸術と幅広い分野に長けた彼が初めて手掛けた小説を何十人もの読み手で読み繋ぐという企画の一角を担わせて頂きました。これまでに読んできた方々は・・・眼鏡店の店員、不動産屋、一般企業事務員、空手家、大学教授、ソムリエ、デザイナーなどなど様々な職種の人たち。そんな中、私が初めての喋り手のプロ参加、しかも自分自身初めての人前での朗読につきかなりのプレッシャーがありました。

朗読、ナレーション、アナウンス・・・いずれも声をプロとする仕事ですが、実は必要とされる技術が全く違います。声に感情を込めずに淡々と事実を伝えるのがアナウンサーで、声に感情を乗せるのがナレーションに朗読分野。感情を殺して伝える訓練を積んできた私たちアナウンサーにとって、実はナレーションや朗読とは至難の業。私も局アナを卒業してフリーランスになった折、プライドを砕かれながら一から勉強し直しました。お陰様でこの分野でも数多くお仕事を頂けるようになりましたが、今でもナレーションとニュース読みでは頭のスイッチを切り替えて臨みます。

話を戻します。

この日は『アートな夕べ』として、音楽と食と土田さんのガラスの新作を一挙にご披露するというイベントが開催されました。

土田康彦さんの新作「カカオの音色の選択」

ショコラティエの小山進さん、音楽家マリー・バンリさん、イッパンジーのライブに、特別ゲスト小林武史さんのピアノ演奏など錚々たる演目の中で、アコースティックギターを抱えた作者でこの日の主役の土田康彦さんと2人でポツンと舞台へ。はじめこそ緊張しましたが、自分の声1つで作り上げていく世界に固唾を飲んで付き合ってくださる観客の皆さん。中には涙を拭っている姿も目に入ってきたりで、自分自身、物語にどんどん入り込んでいきました。土田さんの歌で締めくくられ、大きな拍手と喝采に包まれて初朗読劇は終了。ステージの真ん中で会場中の注目が自分に向くとはこれほどまでにも達成感の大きいものなのですね。ひとこと、楽しかった・・・。

自分自身への課題もたくさん見つかりましたが、たまたま会場にいらしたナレーションの大手事務所の方にお声掛け頂き、貴重なアドバイスも色々と頂きました。今後はこの分野も伸ばして行きたいなぁ。事務所の皆さん、頑張ろう!

貴重な機会を頂きました。

当日の朗読劇は土田康彦さんのinstagramでご覧頂けます。

『辻調鮨科 21』をご覧ください。

https://www.instagram.com/reel/C606PGnJac8/?igsh=MWhkczdscHlpZWRwNw==