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2022.07.07 中嶋 健吉
中国新幹線 (7月6日の日経記事から)
中国の過剰債務問題では、不動産業界が取り上げられるのが一般的でした。
恒大グループに次ぎ世茂集団の債務不履行が報じられるなど、確かに事態は深刻度を増しています。 しかしそれ以上に実態が不透明として問題視されていたのが、今回日経が取り上げた新幹線建設に伴う過剰債務問題です。
中国の新幹線建設は、2035年までに人口50万人以上の全ての都市に高速鉄道を通す国家プロジェクトとして、2007年から運行がはじまっています。 15年経過した現在で総延長が4万キロを超えており、単純計算で年間2600キロ以上建設したことになります。 日本の新幹線は第一回東京オリンピックの1964年からサービスを開始、54年経過した現在の総延長距離が3300キロですので、中国は1年半足らずで日本の54年間の総延長距離を造ったことになります。
昨年末、中国のポータルサイト百度が中国の高速鉄道は毎日5億元(約100億円)の損失を出していると驚くべき記事を報じました。 国家プロジェクトへの批判とも取れる内容で、事前の了解無くしては書けないものです。 高速鉄道の運営を担う中国国家鉄道集団自ら公表したとの憶測が流れています。 事実黒字路線は上海―北京間だけで他の路線は全て赤字と言われています。 更に国家鉄道集団は運営のみを担当しており、日経記事にある現在抱えている120兆円の負債には建設費は一切含まれていません。 建設費を考慮すれば上海―北京間すら赤字と言われています。 巨額な建設費がどの様に処理されているのか実態は不明です。 2011年、安全を無視した無理な運営で浙江省で大きな人身事故が発生します。 これを契機に2013年に鉄道省が廃止され生まれたのが、運営に特化した鉄道集団で、それまでの累積建設費などの債務の引継ぎは無かったようです。 日本の国鉄民営化で累積債務の三分の一を新会社に引き継がせ、その金利負担に新会社が苦しんだことを勉強したのかもしれません。
日経記事によると、鉄道集団は2035年迄に更に3万キロの延伸を予定しており総額3兆6千億元(約73兆円)の資金調達の為、国有企業を引受主体とする債券発行を報じています。 今までの隠れ建設費の負担に耐えられなくなった国が、鉄道集団に新たに生じる建設費の負担を強いたとすれば中国の懐もかなり寂しくなってきたのかもしれません。 最終処理の行方に注目です。