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2022.06.15 鈴木 一之
多様性とは、譲り合い
6月10日から海外からの旅行者の人たちに門戸が開かれました。「鎖国」とまで言われた日本の厚い岩盤が少しずつ雪どけを始めたようです。コロナ危機はまたひとつ、大きな壁を乗り越えました。インバウンド消費の復活への期待が高まります。
おみやげ屋さん、ホテル、レストラン、鉄道会社、ドラッグストアなど、ほっとされているお店、会社も多いことでしょう。早くコロナ以前のにぎやかさに戻ることを願うばかりです。
ただ、水を差すつもりはまったくありませんが、経済が再開されればそれに伴って軋轢も生まれることも心にとめておかなくてはなりません。「オーバーツーリズム」や「観光公害」と言われたあの状況がついこの先日のように思い出されます。
テーブルマナーひとつをとってもそうです。幼いころ、私は父母、祖母から食事のマナーをそれはそれは厳しくしつけられました。
・箸はきちんと持て
・茶碗はきちんと持て
・食卓にひじをついて食べるな
・食卓に置いてある食器に自分の口を近づけて食べるな
・咀嚼する時にくちゃくちゃと音を立てるな
・ごはんつぶは一粒も残すな、食器はきれいに食べろ
・食卓は汚すな
・レストランや電車内では騒ぐな、小さな声で話せ
まだまだあります。数え上げればきりがありません。マナーに違反したら父からその場でひっぱたかれました。そうして身体で覚えさせられました。
大人になって何人かの人と外食する機会が増えました。一緒に食事をしている人たちに対して上記のような作法がいちいち気にならないのは、きっと私以外の人たちも同じように子どものころにご家庭で厳しくしつけられてきたのでしょう。
先日、レストランで中国人(だと思います)ファミリーととなり合わせの席になりました。お父さん、お母さんと小さなお子さんの3人家族でしたが、見事なまでに上記の作法すべてに反する食べ方をしていました。
そのご家族にも悪気があったわけではないと思います。ただ、幼いころから慣れ親しんだ文化が違うのです。私も食事を楽しみたいので、お店の人にお願いして席を替えてもらいました。
多様性というのはルールがたくさん存在する社会です。日本はいつまでも単一民族の社会を貫くことはできません。多様性とは、譲り合いの精神なのだと思います。
インバウンド消費が急拡大したあと、急速に縮んで、そしてまた拡大しようとしています。私たちも少しずつ心の準備をしてゆかなくてはなりません。
(スズカズ)